夏休みにチケットを買ったまま行きそびれていた「クリムトアライブ」に行ってきました。
もうすぐ最終日なので、すべりこみです。
クリムトアライブはひどい?
¥3,000もするのに、原画は1点もありません。
Xで、前評判をみていたので
お金払う価値なさそうだし、やめとこ・・・。と1度は思ったのですが。

クリムト大好きな母にグッズを買いたい。
と思いまして。
ちょうど母の誕生日も近いし、クッキーとTシャツ欲しさにチケットを購入してしまいました。
ちなみに母はウィーンで本物のクリムトを見てきて以来、クリムトが大好き。
ウィーンのどこで、なんの作品を見たのかわかりませんが、『接吻』が大のお気に入りなのでベルヴェデーレ?で見たのかもしれません。
母に聞いてもどこで見たのかよくわかっていないようです。ツアーで連れて行ってもらったのかな?適当だなあ・・・
クリムトアライブとは?どんな展示?
「クリムトアライブ(Klimt Alive)」は、オーストリアの画家グスタフ・クリムトの作品世界をプロジェクションマッピングで再現した没入型アート展です。
以前話題になった「ゴッホ・アライブ」と同じ運営会社による企画で、会場内では音楽・映像・香りを使って“黄金のウィーンの世界”を体感できるというもの。
「ゴッホ・アライブ」もなかなかに評判が悪かったので、ゴッホ好きな私としては
行かなくてよかった〜。
と思ってたとこでした。(そもそも開催してたの知らなかったけど)
悪い評判が、かえって気になる。
7月18日から開催されていて、私は恵比寿の駅の看板で知りました。
原画ゼロってことを知り、はじめは行く気がなかったものの、グッズは購入したいのと、あまりにも悪いレビューを読んでいたらかえって確認したいような気持ちがふつふつと沸いてきてしまいました。
なにごとも、経験。何かを言うならまず見てから。
見たらきっとがっかりするに違いない。とわかっていながらも、
見ないで批判するのも良くないんでは。まず見てみないと。と思いました。

展示はコピペなパネル、ウィキペディアふう。
ほかのかたのnoteなどの記事にもありましたが、実際に訪れてみると、やっつけのようなパネルの展示でスタートします。

この絵は有名ですが、ちくび映らないようにカットしたのかな?
撮影OKの展示なので、SNSでBANされないように配慮したのかもしれません。なんだかなあ。
好き勝手なところでトリミングしていいのかなあ。そういう展示なのか。
「女の三世代」も、おばあさんのところが切り取られていて、三世代入ってないやん・・・。というパネルになっていました。あの作品じたいは好きです。
人が写りこんでしまうので写真は撮っていません。
「美術展」ではなく「映像エンタメ」です。
美術館とは違う、こういうイベントなんですよ、ということをあらかじめ理解して行ったので、まあまあ、こんな感じですかーというのは理解できたのですが、パネルについての私の感想は以下です。
- 拡大コピーを好き勝手なところでトリミングしたようなパネル
- 全体の絵についての説明もあるが、小さくて暗い。
- 解説文はWikipediaのような内容
美術的な深みはあまり感じられませんでした。
美術館に普段行かない人が、ちょろっとかじってみるのには、取っかかりとして良いのかな?という気もしたのですが、
そもそもこの解説で合ってる?というのが心配なクオリティー。
知らない人にこそ、真実だけを伝えて欲しい。嘘書いてないかなーと心配です。

画集を読んだほうがよさそうです。
「原画なし」で3,000円。値段に見合う価値はある?
あらかじめ原画がないことは理解して行きましたが、それだと入場料3,000円という価格は高いなー!と感じます。
本物の作品が来日した展覧会よりも高い設定。
1,000円程度なら、まあそういう「映えイベント」と割り切って払ってもいいかなと思えるのですが。
まあ大きな画面でビカビカさせるのにお金もかかるでしょうから、仕方ないのか・・。
正確な情報なのかが不明なテキストで不安になる
もう、入り口からこれ。

「All art is erotic.」という言葉をクリムトが本当に発したのかどうかは、本・ネット・AIで調べたかぎりでは見つけられませんでした。
オスカー・ワイルドが似たような言い回しの言葉を残していて、それと絡めてクリムトを紹介する文章に使われている、という説が優力なようですが、実際どうなんでしょうか。出典があるとありがたいです。
展示の中に何度も出てくる、「芸術とは思考を囲む線である(Art is a line around your thoughts)」というワードも同様に、クリムトが言ったという事実は確認できませんでした。
クリムトさんはそんなこと言ってない。かもしれない。
クリムトさんは英語を話していなかったと思うので、もしかすると同じような発言をして、翻訳によって変化しているということはあるかもしれません。
「私が描くのは女性であり、女性、そして再び女性だ」っていう感じのことは、本当に言ってたみたいです。
この会社が以前に開催した「ゴッホ・アライブ」展がもっと酷くて、「ゴッホそんなこと言わんやろ」というワードを流し散らかしてたという前評判を聞いていたのもあり、展示への信頼感が薄かったのも疑念を持ってしまった一因です。
写真・動画撮影OKで落ち着けない
人が多く、スマホのシャッター音が絶えず鳴り続ける会場。
静かに作品を感じ鑑賞はできません。
パネルをかしゃかしゃ撮っても、あとで見る人はどれくらいいるのでしょう。
まあそういう私も、ここに載せる素材用に撮ってはいたのですが、嫌になって一応消音カメラを使いました。
「ばえ」撮り祭り、なんだか疲れた・・・。

展示の目玉は映像コーナー
パネルを見ていたら「どうせバカだから読まないでしょ」と言われてるような気がしてきました。(被害妄想)
そんな来場者を馬鹿にしくさった企画者の意図を感じながら、とっとと映像コーナーへ。
クリムトを「浴びる〜」と聞いてきたが・・・。
映像のコーナーは「降り注ぐ黄金!」「作品を浴びる!」「新しい没入感」という謳い文句だったので、「いよいよメインだよ!」という期待は少しばかり、あったのですが
バックライトで光らせすぎて作品の色は薄いというか、期待したほど鮮やかな世界ではなかった・・・。

こんな感じ。写真のほうが綺麗に撮れました。
実物はバッ、バッと切り替わってしまうので、こんなシーンも一瞬で消えてしまいます。

とある紹介記事でのイメージ写真では、もっと人が少なかったので床まで見えていい感じでしたが・・・。


実際は混んでいたのと、会場がもっと明るくてここまで映像のコントラストがはっきりしていませんでした。
この見本の写真ぐらいに会場が暗くてすいていたら、楽しく見られたかもしれないですね。
まあ人が多いのにあんまり真っ暗でも危ないですし、これもしょうがないのか。
TOHOのドルビーシネマのほうがきれいです。
人が多いので浴びられない
床に映し出される映像もセットで楽しめたらよさそうですが、人が多いのでそこまで広い面積で映像に囲まれることはなく、視界の半分ぐらいは来場者で埋まっているので、降り注ぐという感じは思ったよりありませんでした。
そもそも「浴びる〜」とかいってるのが、なんか若い方の楽しみ方かなあと思っていまして。
おじさんおばさんがいい歳して「浴びてきた〜💕」とかいってたら、気持ち悪くないですか?
中高生とか、大学生とか、まあ20代ぐらいの方まではいいと思います。かわいい。
クリムト以外の作品も混ざっていた
これはひどい、と感じた最大のポイントは、なんと、バシバシ映し出される絵画の映像に、クリムト以外の作品が混ざっていたことです!!
ジャポニズムのターンには北斎や若冲の日本画が挿しこまれているので、そのへんは明らかにわかるのですが、
そんな感じだと、ほかのウィーン分離派とか別のターンの時にもなんか混ざってる・・・?と不安になり、
気になって没入できませんでした。
映し出された全部の作品の作者を知ってるほど私が詳しくないので、もしかしてほんとに全部クリムトの作品ですよ、っていうのならいいのですが。
いやジャポニズムのところでも、単純に混ぜないでよ・・・。
上映時間がそこそこ長いけど、座れない
一応椅子はあるのですが、来場者にたいして圧倒的に数が少ないので立ち見です。
健康な方、お若い方は積極的に椅子取りゲームに参加するわけにもいかないので、座れない。
疲れました。
ビカビカ切り替わる、まぶしいスクリーンを立ちっぱなしで見続けたので、終わると疲労感でいっぱいです。
ポケモン効果でしょうか?(脳の視床下部を刺激し続けると気分が悪くなるという、あれ)
唯一の救いのクッキーが売り切れ

もはやこのためだけに行ったのに。クッキーはもちろん完売していました。
想定内でしたけどね・・・。ええ・・・。
メレンゲのお菓子がクリムトのお花カラーですよね。見たかった&食べたかった。


帰り道、フリマアプリをのぞいたら、空き缶が1,500円で出品されていたので即ポチっとしました。
翌日にもう届きました。なので、なんとなくカフェタナカクッキー缶を買えた気になりました。
ありがとう、出品してくれた人。
空き缶にカフェタナカのクッキーを詰めて、クリムト大好きな母に贈りたいと思います。
↓リンク貼っておきますが、カフェタナカの公式オンラインのほうが安いので正規ルートでの購入をおすすめします。
空き缶は、運がよければメルカリにあるかもしれません。
よかったところ
いい香りはします
会場にほんのり、香りを出しているのはよかったと思います。
色々考えられた香りらしいです。
人が多くてマスクをしていたので、会場に入るとすぐわからなくなりましたが・・・。

フォトスポットはかわいいらしい。
フォトスポットがあったようですが、へとへとだったのでまっすぐ出口に向かってしまい、見逃しました。
友人から教えてもらったこの写真で知りました。お花がかわいいですね。見てないけど。
スタートのすいている時間に行くとよいと思います。

グッズはきれい。コラボメニューがおいしい。
そもそもグッズ目当てで行ったので、物販は良かったと思います。
いいお値段しますが、だいたいのイベントグッズの相場なので許容範囲。
COREDO室町の中での開催なので、飲食店での企画メニューも充実していました。
文字を読めない方には良い企画
文句ばかりになってしまいましたが、1点気づきがありました。
大きな車椅子の方も鑑賞されていました。
会場では車椅子のお子さんを連れたご家族もいらっしゃいました。
そのお子さんはおそらく重い障がいをお持ちの方で、首の後ろまで支えるタイプの車椅子に乗られていました。
あのお子さんは、文字の解説を読むことはできなくても、アライブ展なら光・音・香りで「感じる」ことはできます。
その姿を見たとき、
「ああ、この展示なら、あのお子さんでもアートを感じることができる。」と思いました。
読字が困難な方にも美術の世界を体験してもらうためのイベントなら、確かに意味があります。
納得した。
そのためにお金を払うことには大賛成。払うよ、わたし。
動かすことで想像力の補助になっている。かも。
「Nature」(自然)のターンの映像では、クリムトの描いた風景を勝手に動かしているのですが、それはそれで
「この時代のオーストリアの自然てこんな感じだったのかな」と想像することができました。
川が流れ、花が散り、虫が飛び交う映像は、まあ好き勝手に動かしているんだけれども(2回目)音楽と香りもついて、都会のビルの中で暮らす人々にはじゅうぶん美しく見えると思います。
本気の田舎から出てきた野犬の私でさえ、特に「沼」の水面(みなも)がユラユラ輝いている映像は、「クリムトさんはこの風景を見ていたのかな」と想像できて、タイムスリップのような不思議な感覚を10秒ほど味わうことができました。
それを没入感というのか。なるほど。
バシャバシャ映像が切り替わるので、没入は10秒です。
本来は絵を映像化して動かさなくても、それぞれ個人が絵画を見て想像するものなのですが、デジタルジャンキーのために親切に動画化してくださったんですね。そういうイベントだと思いました。
まとめ:「ウィーンに行けない貧乏人はこれでも見とけや」と言われている気がしました。(被害妄想)
まとめるとそんな感じです。
「でかいスクリーン見せて、かわいいグッズ売っときゃいいよね」という企画者の意図がみえみえでした。かなしい。
インスタ乞⚪︎のための映像エンタメ
クリムト、ばえる〜!
カフェタナカのクッキー缶、買えたー!!
という方にはぴったりのイベントです。いいと思います。クッキー欲しかった。
知って行ったからいいんだけど、高かったなあ。
危機感と悲しみ。日本が貧乏になっているからかもしれない。
前出のXにも投稿されている方がいましたが、本物の美術作品を借りてこられるだけの財力が、日本になくなってきたからでは。という説が案外本当なのかもしれないな。と感じます。
美術作品、大きいし、貴重だし、輸送にも警備にも莫大なコストがかかります。
梱包して飛行機で運ぶということ自体がそりゃ危ないし、心配ですよね。
作品を守るためなら、もうこんな展示が増えてもしょうがないのかなという気もしてきます。
これまで本物が見られたのも、多くのかたのご尽力があってこそだったのだな・・・とあらためて思いました。
ウィーン行くしかないのかな。
アライブ展を楽しめるのはこんな人
- 本物の絵画は1点もない。ということを理解している、またはなくても別によい人
- 自由に撮影したい、他の人が撮影しているのも気にならない人
- 限定グッズを買いたい人
- コラボメニューを食べたい人
この展示でしか買えないグッズは良かったので、お買い物するんだ。という強い意図を持っていくかた(わたしです)には満喫(?)できる展示です。
アライブ展、2度と行かないと思いますが、よほど欲しいグッズがあったらもしかするとまた行ってしまうのかもしれません。
商業主義のマーケティングにまんまとはまる、愚かなわたし。
チケットを買う時からこの記事をまとめるまで、情けなさと敗北感でいっぱいの貴重な体験でした。
ウィーン行きたいなあ・・・。











